One&Co | 【対談】「DXと人」の未来とはSojitz Asia Pte. Ltd. 田村さん×GAOGAO Pte. Ltd.手島さん (後編)
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2021.05.21

【対談】「DXと人」の未来とはSojitz Asia Pte. Ltd. 田村さん×GAOGAO Pte. Ltd.手島さん (後編)

経済産業省は2018年に「DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成30年12月)」を発表し、定義を「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とし、推進しています。

D Xが必要不可欠な時代へとなってきている中、何のためにD Xを進めていくのか、進めていくとどうなるのか、といった原点に立ち返り、コアを理解していくことが改めて大切だと感じます。

日本のDX第一人者である東京通信大学の前川教授も言われるように、D Xとは単なる情報のデータ化だけではない(*1)と理解することが大切です。DXはあくまでも人が中心となってデータとデジタル技術を用いながら、業務や組織などを変革、改善していくことで、「デジタル」と「人」ができることを最大限にかけあわせていく方法を模索し続けなければなりません。

そこで、昨年12月にOne&Coで実施したDXセミナーの講師、GAOGAOの手島拓也さんと参加者のお一人である双日株式会社(Sojitz Asia Pte. Ltd)の田村裕治さんをお迎えし、双日株式会社が導入した人事のDX推進について伺い、「DXと人」について一緒に考えるべく、本対談をお願いしました。


前編では、企業におけるDXの課題、双日株式会社でのDX導入のことを伺いました。前編はぜひこちらからご参照ください。

田村裕治さん(左)と手島拓也さん(右)

プロフィール
田村裕治さん(左) | 双日アジア会社(Sojitz Asia Pte. Ltd)https://www.sojitz.com/jp/
General Manager of HR & General Affairs Department (人事総務部長)
同社13年勤務。2019年7月に渡星。渡星前には東京本社で人事のD X「タレントマネジメントシステム」導入に関わる。

プロフィール
手島拓也さん(右)|GAOGAO Pte. Ltd. Co-Founder&CEO
https://gaogao.asia
これまでIBM研究所やLINEなど10年間以上ソフトウェアエンジニアとしての開発現場を経験。現在はコンサルタント兼エンジニアという立場で東南アジアの企業を中心に新規事業立ち上げ支援や顧客向けの価値提供の最大化と社内組織自体のデジタル化に注目したDXの推進を進めている。


田村さん
手島さんは企業のD Xコンサルティングなどもされているということですが、D X導入・促進の鍵は何だと思われますか?

手島さん
先ほども言いましたが、社内の抵抗には業務フローの段階で企画段階から巻き込むことが重要であると思っています。

ただ実際に、初めのステップである会社全体としてデジタル化を促進するための土台づくりすら難しい企業も多いです。そういった企業は、まずはデータ基盤をつくること、その後でデータを活用した顧客分析やマーケット分析を行なったりし、インサイトを得るということが大切だと感じます。

DXは単に業務を自動化するためのものだけではなく、会社によって課題も違うこともあることから、時間がかかるものです。魔法のように「きれいに解決」というよりは、ハンズオンで「泥臭い」というイメージの方が合っている気がします。

「デジタル人材」の重要性とは?

手島さん
レガシー化している大企業によくある話なのですが、D X促進のために外部のシステムを導入(購入)する、という外部への丸投げはやってはいけませんね。会社としてD Xの理解を深めていくこと、そしてそういったことに詳しい人材「デジタル人材」を育成していくことが大事です。

双日株式会社さんは「デジタル人材」への取り組みで何かやっていらっしゃいますか?

田村さん
「I Tパスポート」を全社員へ必須化をしていることで、I Tリテラシーを全社員、共通言語として理解していることがあります。また、「D X育成モデル」を会社として設定していることもあり、長い目線で取り組んでいます。

手島さん
社内の「教育」と社外からの「採用」を同時に進めていくことが大切ですね。デジタル人材として社内の人間を育成することの重要性はもちろんですが、社外から詳しい人間をChief Digital Officerとして採用するという方法もあります。

消費者側はこちらが思っている以上にデジタルに進んでいることを理解して、社内のD Xを進めていくことが不可欠ですね。

田村さん
そうですね。先ほども申しましたが、影響力のある人を巻き込むことがポイントだと思います。実際はトップダウンが一番良いですが、現実的ではないと思います。ボトムアップになるので、計画段階からいかに巻き込んでいくのかが鍵ですね。

これからD Xが向かうところ:「データを活用する価値」

手島さん
例えばウェブサイトでの販売が伸び悩んでいる時に、商品が売れていないことは分かっていますが、「なぜなのか」という部分は人の感覚では追いきれない部分があります。その点、データを使うことで理由を探るきっかけや改善策が見えてくる場合があります。

田村さん
弊社で人事にD X導入した際にも、決定の場面でこれまで人の感覚や経験を頼りにやってきた部分を、データという根拠をもって人の決定を補助することを目的としています。

手島さん
早くて、高精度な意思決定が可能になるということですが、決して「データが示すもの」V S「これまでの経験や勘」ということではないですよね。データを活用して、決定をするということですね。

田村さん
そういった意味では、今日明日ですぐに結果が見えるものではありませんね。人事は「人」なので、「人」は必ず関わってきます。人間では判断できないことについて、D Xとともに正しい判断を目指していきたいです。

手島さん
大手商社がDXに想像していたよりも取り組まれているのが面白いですね。データやAIの時代ですが、やはり人材を一番大事にするというのが伝わってきました。今後、人による嗅覚の精度よりもAIが人のマネジメント精度の方が上回った時代と考えるとワクワクしますね。


One&CoではDXセミナーを実施しています。GAOGAO手島さんを講師にお迎えし、「DXの知識を得る」だけでなく、参加者自身が「DXの実行」をよりイメージできるような成果を得られることにフォーカスした勉強会「いまさら聞けないDX」です。ワークショップを通じ、参加者自身が職場など身近なところでDXの必要性を一層意識し、より実践に活かせるような価値をこの勉強会を通じて届けることを目指しています。