One&Co | OMOTENASHI Selection 2020特別展示② / 思い出をいつまでも「ペンケースに変わるご祝儀袋」
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2020.09.16

OMOTENASHI Selection 2020特別展示② / 思い出をいつまでも「ペンケースに変わるご祝儀袋」

One&Coでは、日本在住の外国人が商品の審査を行い日本の優れた工芸品を認定していくOmotenashi Selectionとコラボレーションし、受賞作10点を展示中です。One&Coを利用される皆様に、コロナ禍で行き来ができない(2020年9月現在)日本の歴史や文化、技術、その美しさをシンガポールで体感して頂きます。ビジネスマンにとっての日常空間であるコワーキングスペースで、様々な日本の工芸品を見て触れて、さらに日本人コミュニティコンダクターがその機能性やデザイン、作者のバッググラウンドなどを紹介していきます。

今回は「ペンケースに変わるご祝儀袋について、アクティライフ株式会社の村上さんにお話を伺いました。



人より少しだけ、そして自分らしさを伝えたい。


―― まず、受賞商品が生まれた背景について教えて頂けますか。
冠婚葬祭にかぎらず、出逢いの喜びや別れの悲しみに際し、お金や品物を贈るという風習は世界共通のものです。その中にあって私たち日本人は、包を被せず裸で贈る露骨さを恥として「包む」という独自の文化を育んできました。しかし、艶やかな水引に彩られた祝儀袋も、手渡された次の瞬間、残念ながら不要の包紙となります。紙が貴重品だった江戸時代には、使い終わった紙は繰り返しすき直されリサイクルされてきましたが、現代ではゴミとして処理されていきます。消費社会の贅沢な世の中において、これまで破棄されていたのし袋が、形を変えることにより、私たちの生活に潤いをもたらす逸品となることを願って、このご祝儀袋は作られました。


「あらゆる資源の有効活用」という理念のもと、弊社は衣類のリサイクルを生業としてまいりました。しかし、当時は“古着を着る”という事への抵抗感が根強く、衣類リサイクル業として顧客に認知されるまでにかなりの時間を要しました。創業から10年。「エコの推進」を謳った営業活動が実を結び、今では、この地においても衣料品のリサイクルは生活の一部として受け入れられるまでになりました。こうしてエコを日常的に考えるようになったとき、結婚式場の受付に山と積まれたご祝儀袋に出会いました。

華やかな宴のあと、廃棄されるであろう祝儀袋に一抹の寂しさを覚えると同時に、祝儀袋にいま一度スポットライトを当ててやりたいという熱い思いに駆られました。「祝儀袋のリサイクル」は“ご祝儀袋を通して新しいお祝いの文化を創造したい”。このような想いから生まれました。また「人より少しだけ、そして自分らしさを伝えたい」このように思っている方々にお役立ちできればと思っております。


―― 商品化までに、これまでどのような苦労がありましたか。
衣類リサイクルを生業としてきたため、私を含め社員は製品を作り出す事業は素人であり、材料の知識・加工技術はもとより、後に主役となる水引の歴史など、多くの不安を抱えながらのスタートでした。しかし地元の大学や行政からの支援を含め、高い技術を持った加工業者様との製品開発のお蔭で、特許取得までに至る製品が完成しました。多くの方からの支援があって生まれた製品です。

―― 現在、どのような「課題」と、その先の「可能性」を見ていますか。
ご祝儀袋の市場価格は500円前後である中、当社の製品は5倍以上の価格設定です。「人より少しだけ、そして自分らしさを伝えたい」との思いを共感いただける方々もおられますが、ご祝儀袋を使用するシーン(周りの結婚や入学など)を購入者がご自身で決定ができない事から、自社製品を知っても購入という行動に移せない点が課題であります。ただ「人より少しだけ、そして自分らしさを伝えたい」と言う思いは年を重ねるほど深くなると考えますので、時間は要しますが需要は年々増えていくと思っております。

―― 今後の意気込みをお願いします。
変わるご祝儀袋「結姫」は、渡し手の大切な気持ちがペンケースとして形を変え、伝わり続ける「贈って嬉しい、贈られて嬉しい、縁が結ばれ続けて嬉しい」製品です。傍らにあるペンケースを手に取ると、あの幸せな瞬間が、まるで昨日のことのように蘇る。これまで無造作に捨てられていた祝儀袋から生まれ変わったペンケースは、人を幸福なひとときへとタイムスリップさせる。思い出として傍らに置くもよし。幸せのおすそ分けとして身近な人にプレゼントするもよし。縁起物として受験生のだれもがお守り代わりにこのペンケースを携帯する。何時かそんなトレンドが湧き起ることを夢見ながら、この変わるご祝儀袋を作り続けていきます。

プロフィール:村上 与司和さん
1967年 生まれ
2003年 衣料品及び洋品雑貨の売買事業を始める
2015年 服飾雑貨製品の製造並びに販売を始める
現在  アクティライフ株式会社 代表取締役