One&Co | Risa’s Bar【vol.03:Crown Prince】ビオディナミ農法を採用するPinot Noirの魅力。
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2020.04.16

Risa’s Bar【vol.03:Crown Prince】ビオディナミ農法を採用するPinot Noirの魅力。

ただの飲み物でなく、ただのお酒でもない。ワインは芸術の一部であり、ワインを学ぶことは歴史や地理、文化や言語まで知ることでもある。ブドウの品種や産地、味わいだけでない、広義のワインを知ることで、普段会えないような方と出会うことも出来る。教養として、ビジネスツールとして、ワインの魅力をご紹介していきます。



昔から自宅でじっとしているのが苦手で、ついフラフラと飲みに行ってしまう。予定がなければ一人でバーに行くのも平気で、というよりむしろ好んで一人飲みに出歩く方かもしれない。このご時世で当面難しくなってしまうのは寂しい限りだけれど、家飲みの楽しさを追求する良い機会だと前向きに考えてみる。Zoomなどの便利なツールを使ったオンライン飲みの話が増えてきているのも面白いことだと思う。

落ち込んでいた夜に自宅で開けたCrown Princeは、そのキラキラした名前だけで元気が出そうな一本。ラベルもシンプルながら可愛らしいこちらは、オーストラリア、ビクトリア州の生産者、Bass Phillip Wines(バス・フィリップ ワインズ)のワインである。

このワインに使われているPinot Noirはブルゴーニュの赤ワインで有名なブドウ品種で、栽培が難しいと言われ、世界で成功している産地は他の品種に比べると少ない。Bass Phillip Winesはオーストラリア最高峰のPinot Noirの作り手と評されるような生産者で、オーナーのフィリップ・ジョーンズ氏が、ブルゴーニュワインの神様と言われるHenri Jayerの素晴らしいワインに魅了され、1970年代に自社畑のブドウをすべてPinot Noirに植え替えたのが始まりなのだそう。

ワイナリーでは他に、白ワイン用のChardonnayも作られている。農園ではビオディナミの農法(ブドウ畑を一つの生命体とみなし、周辺環境だけでなく月の満ち欠けや宇宙のリズムのようなことも考慮に入れるという有機栽培の手法)が採用されており、ワインの味わいに複雑さを持たせるために収量がかなり抑えられ、手摘み後に丁寧な選果を経たブドウで醸造されるため、どのワインも生産量は少ない。

Crown Prince Pinot Noirは、Bass Phillip Winesのラインナップの中では最も手ごろな価格のワイン。嫌いな人はいないだろうと思えるピュアで明るい味わいは、元気がないときの一人飲みにちょうど良い。理由はもうすっかり忘れてしまったけれど、ちょっと泣きたいくらいには落ち込んでいたその日の私にとって、このワインの程よく甘やかな香りとはじけるような赤い果実の風味が、沈んだ気持ちにふわっと明かりを灯してくれるように感じられた。

<おススメのタイミング>
シンプルな赤身のお肉料理に・元気になりたいときに一人で・女友達へのプレゼントに



Writer|青木里沙 (One&Co ホットデスクメンバー)
三重県出身、シンガポール在住。東京で働いていた2016年に、ひょんなことから思い立ってJSAワインエキスパートの資格を取得。ワインを学ぶ過程でできた素敵な友人達のおかげで座学よりも実践が必要と身に染みて感じ、そこからは楽しい修行の日々。夢はワイナリーを所有すること。One&Coのバーカウンターで「Risa’s Bar」を運営している(不定期)。



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