2021年8月25日~27日にシンガポールでアジア太平洋地域初の代替タンパク質&フードテックイベント「Alternative Protein &Foodtech Show(APS)」が開催されました。このイベントは、代替タンパク質分野のエコシステムプレーヤーそれぞれに、独自の意義をもたしたことだと聞きます。今回、このイベントに参加されたOne&Coメンバーでもある東洋製罐グループのMs. Ribella Lee(ベラさん)に、イベントの概要や意義についてなど、話をお聞きしました。
東洋製罐グループ(略称:東洋製罐G)は、日本に拠点を置き、缶・ガラスびん・PETボトル、紙容器などを供給する総合パッケージメーカー。同社は2年前に「OPENUP!」プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトは、1世紀以上にわたって業界をリードしてきた東洋製罐Gの技術を活用して、社会的課題を解決し、持続可能な未来を確保することを目的として、企業やスタートアップ企業とのコラボレーションや投資を行っている。東洋製罐Gが最近行った投資のひとつに、Shiok Meats社がある。
―― まず、APSとは何か、目的や特徴など教えてください。
ベラさん:米国の非営利団体KETがアムステルダムとサンフランシスコでそれぞれ開催した過去のイベントに続き、東南アジア初の細胞培養ベースの代替タンパク質企業であるShiok Meats社が、イベント会社のSciGlo社とともに初めてパートナーシップに参加し実現した代替タンパク質、フードテックに関するカンファレンス・イベントです。開催目的は、食品業界における代替タンパク質の今後の役割について、関係者が一堂に会し議論すること。各分野の専門家の話を聞くことができるだけでなく、出展者のブースでは最新の食品技術が展示されていました。また、植物ベース肉のスタートアップ企業の製品を使用したアジアン・ローカル料理が入った「未来型」のランチボックスも用意されました。
本イベントの特徴の一つは、質の高いネットワーキングセッションだと思います。今回のイベントは、プレゼンテーションやピッチ、パネルディスカッション、調理デモを含めたワークショップ、展示などで構成されており、参加者は自分の興味や役割に応じて自由に、通常のフル参加型から、個別セッションを選択、参加し、ネットワーキングを行うことができました。また、このイベントは関係者だけでなく、学生や一般の方々にも、代替タンパク質の新しい世界を垣間見て、体験していただくための絶好の機会となっていました。
―― 本イベントの共同主催者でもあるShiok Meats社に東洋製罐Gは出資もされています。代替タンパク質のスタートアップ企業の彼女たちにとっては、このイベントにどんな意味があると思いますか。
ベラさん:今現在は大きくは3つ、意味があると思っています。
①ブランド認知度の向上
Shiok Meats社は主催者として、このイベントをフードエコシステムの参加者の間で自社のブランド認知度を再強化するためのプラットフォームとして活用することができます。特に、このイベントはアジア太平洋地域では初めての試みであるため、Shiok Meats社は、このようなイベントを開催する先駆者として、良いイメージと評判を得ることもできるでしょう。イベントが成功すれば、メディアや世間の注目を集め、会社の知名度が上がり、海外市場への参入など、長期的に大きな利益につながる可能性があります。
②エコシステムプレーヤーのビジネス価値の創造
著名なリーダーや専門家によるセミナーやパネルディスカッションを開催することで、Shiok Meats社は、研究開発を行うスタートアップ企業というだけでなく、新しいアイデアやコラボレーションの推進者として、また、様々なエコシステムのプレーヤーの活動を促進し、結びつけるプラットフォームとしての地位を確立することができます。これによりShiok Meats社は、代替タンパク質産業の発展加速に貢献する、価値ある企業プラットフォーマーとしてのポジションを確立することができます。
③ネットワークコミュニティの強化と信頼の確立
Shiok Meatsは主催者として、イベントの企画やネットワーキングなどの面で、オーディエンスと直接関わることでつながりを深め、信頼を獲得し、ひいては企業間のネットワークコミュニティを強化することにつながる。これにより、将来的なビジネスコラボレーションの機会、可能性が生まれます。
―― 東洋製罐Gにとって、このイベントにはどんな意味があるのでしょうか。
ベラさん:まず第一に、日本とシンガポールの「代替タンパク質に関する規制構築の架け橋」になると考えています。日本細胞農業研究会のメンバーである私たち東洋製罐Gは、イベント内のパネルディスカッションにおいて、代替タンパク質に関する日本の規制状況についての洞察を提供することができました。これにより、東洋製罐Gと協力して日本市場を開拓したいと考える参加者に、新たな扉を開くことができるかもしれないと感じています。
―― 御社は、日本の代替タンパク質市場を加速させる上で重要な役割を担っていることが分かりました。投資収益や将来の発展にプラスの効果をもたらす可能性もありそうですね。今後のビジネスチャンスやコラボレーションについてもお聞かせください。
ベラさん:本イベントの参加者は、代替タンパク質分野の様々なエコシステムプレーヤーで構成されており、研究から商業化までの様々な段階で役割を果たしています。私たちは今回のイベントでブースを出展し、従来のビジネスとそうでないビジネス両方において、東洋製罐グループというブランド名の認知度を高めることを目指しました。これにより、将来的にビジネスチャンスやコラボレーションの可能性が生まれ、長期的な利益につながることを期待しています。
―― アジア太平洋地域初の代替タンパク質&フードテックイベントを通じた気づきなどあれば教えてください。
ベラさん:このイベントは、代替タンパク質エコシステムプレーヤーにとって、それぞれ異なる意味や可能性を持っていることがよく分かりました。また、「代替タンパク質業界の成長を加速させる」という共通の目標を持っていたことも収穫のひとつです。様々なエコシステムプレーヤーが共通目標に向かって取り組むことで、近い将来、代替タンパク質食品が「代替」と呼ばれなくなる日が来るかもしれません。
*Shiok Meats:2018年8月にシンガポールで設立された、東南アジア初、細胞培養ベースの代替タンパク質スタートアップ企業。動物から細胞を採取、培養することで、美味しくクリーンで健康的なシーフードを提供することを使命としている。現在はまだ研究開発の段階で、2022年の商業化を目標としている。